hunting 狩猟とは(第二十三話)
document 2010january前編

バッシャーン! 衝撃波は薄暗い狭間に

激しい飛沫を散らし まるで大輪の花火が

一瞬の輝きの末 急速に萎むかの様に

滝壺は元の姿を取り戻して行った

トヨ状に切り取られた花崗岩の落ち口を

跨いだ其の格好で ゆらり浮き上がらんと

する黒塊を何時までも呆然と見下ろし続けた

おい!落ちんといてよ”背後からの声に

はたと現実に引き戻される

晩秋穏やかな猟場
こんなもん二人で充分だぜ”目検討で横に立った猟友が呟いた その言葉に反しこの地から

運び出されるのを拒むかの様に根を張りピクリとも動かない 雪中での搬出は困難を極める事に

うっ重いぞ”当初の段取りを変更し山裾をカバーする仲間三人の応援を求めた 車止め近くの

一人に雪路迎えに下りて貰う 応援部隊が到着するまで幾らかでも下げて置かねば? まだ

お昼前といえ 冬場の山はあっという間に闇が押し寄せてくる ”せぃのぉ。。” 息を合わせ

渓中を曳き降ろすが 幾らも進まず岩と岩に挟まりこんで動かない 小滝落ち込みや落差の

有る場所は落としてしまうのだが 今度は其の場所から曳き上げるのに窮する始末と成って

一向に捗らない 撃ち倒した位地から50mも下れば落差15mばかりの滝に出る 其処を落とし

応援を待とう 右肩斜面から滑り落ち壷脇の雪上に座り込んだ 曳き上げた塊は雪の中で

漆黒に艶めき幾筋もの雫が滴リ積雪に吸い込まれていく ザッザッザッ 落水の音だけが響く
数日続いた荒れ模様は 結構な積雪を

残し ゲートから先の進入を阻んでいて

確認の斥侯とばかり様子見に向かった

辛うじてジムニーなら進めることを確信し

2台のジムニーに乗り込み奥へ目指した

前を進む1台は既にデフを摺リ出して居て

果たして何処まで行けるか見当も付かない

小峠を越え暫くはくねくねした平坦な車道

とは言っても一面凹凸も無くなった雪面に

おぃ右側の側溝に落とさん様気ぃつけて

後方から無線で注意が幾度も飛ぶ

雪の無い本流岸辺では時に
一度ルートを割り轍を残せば後の問題は無いだろう まず2人を降ろし其処から高低差100m

ばかりの本流に下り 対岸のピーク向けて切れ込む枝谷出会いと其の上分岐点へ向かわせた

此処からもう1本上流側の谷中段の中待ちへと向かうベテランを降ろし 2台は更に奥に向け

前進する 何時か亀の子化し立ち往生前進が無理に成る 其の地点から雪原をラッセルして

向かう行軍に成ろうかと覚悟はしていたのだが そんな覚悟に反しなんと目標の何時もの駐車

スペースまで辿り付いてしまった ”ギィッ” 助手席のドァを開けると積雪は 床の辺りまで有り

膝丈程のものだろうか? 路肩の場所本流に下る段差辺りは優に腰丈を超えてしまう事だろう

此処まで来たベテランに勢子を促し 何時もと様相の違うルートを降り出す この地を熟知して

居なければ其の選択に迷いきっとスムーズに進まない事だろう ”ん?”進路の先何時もモノが

徘徊してる場所に其れこそ除雪車が作業した跡かのような溝が? 今朝方の野獣によるもの

なのだろうが此処はよく鹿が朝方動き回る場所で此れもそうではと思いながら徐々に近付いて

溝の底を覗き込んだ ”猪じゃ無いか?其れもでかい”控えの爪痕がくっきりと残る その辿る

先には降り続く積雪に空腹からかそこ等一面雪を起し稼いで居た 私らにして不味い事は其の

爪先が向く方向は 更に奥地にと続いている
 <document2010january 後編に続く>